第11章 君は桃

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……彼女のかぐわしいうなじに唇をつける。 「ん……」 まだ変に色づいていない声で彼女が身じろいだ。 リコ、起きて。 それで「またあ?」なんて言いながら、本当には怒らないで。 俺が素直に愛を表現したら、照れくさそうに紅潮させた顔で笑って欲しい。 君を守る紳士的な彼氏でいたいけど、こんなに抱きしめてたら無理みたい。 ……すげー好きだから。 どうしてこんな気持ちになるんだろう。 自分よりも、家族よりも大切な人。 ずっと俺のそばにいて。 もう一度そっと包み紙を開く。 果汁がこぼれないように、果肉は壊さないように、優しくじっくり味わうよ。 甘い彼女をひとりじめしたい。 何度もキスを落としたら……ほら。 いたずらをしたような、いや、されたような表情で、目を開けたリコは俺を見て小さく笑うんだ。 完
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