Real -シンジツ-

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――― 彼と出会ったのは、高校2年生の冬。 いつも通っていた、母校である『夢愛学園高校』近くの図書館。 そこで私は、『シュン君』と出会った。 こんな少女マンガや小説みたいな出会い方が本当にあるなんて・・・。 こんな出会い方が身近にあるなんて、全く想像した事がなかった。 この当時の私はとある歴史小説シリーズにはまり、この図書館を訪れる度にストーリーを読み進めていた。 本棚に並ぶ、沢山の文庫本。 背の低い私は、棚の高い場所にある目当ての本を手にするのが毎度至難の業だった。 この日も私は、高い所にある目当ての本を取ろうと、本棚の前で背伸びをしていた。 ようやく指先が届いたお目当てに触れ、そーっと力を掛ける。 しかしこの日は書籍整理が終わった直後で、本棚の中身がぎゅうぎゅうに詰められていたのだ。 力の掛かった1冊の本に引っ張られ、その近くにあった本が一緒に落ちてくる。 頭から複数の本をかぶった私に、背後から声を掛けてくれたのは・・・。 「大丈夫?」 その声の方に振り返ると、そこに立っていたのは1人の男の子。 濃紺のブレザーに、臙脂にネイビーのラインが入ったネクタイ。 やや痩せ型で背の高いその風貌に、思わず釘付けになった。 彼は本にまみれて座り込む私に笑みを向け、散らばった複数の本を拾い上げる。 そして棚の上段に手を伸ばし、私が落としてしまった本を順番通りに並べ綺麗に元通りにしてくれた。 「ありがとう・・・。」 「どういたしまして。」 これが彼との、初めての会話だった。 女子校に通う私は男の子と話す機会がほとんどなく、彼との会話はとてもぎこちなかったように思える。 しかし、男女共学である『宝永学院高校』に通う彼は、初対面の私にも気さくに話し掛けてくれた。 「その制服、夢愛学園の制服だよね?」 「うん・・・。」 「家もこの近くなの?」 「ううん。柏から通ってる。」 「そうなんだー。 俺ん家、この図書館のすぐ近くなんだよね。 だから帰宅前によくここに立ち寄るんだ。」 彼の家は、この図書館から程近い場所にある新興住宅地にあるのだと聞いた。 学校から帰る途中にいつも立ち寄る図書館。 今までは同じ空間に誰がいるのかなんて注目した事がなかった。 だけどこの日から、私は毎日彼の姿を探すようになった。
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