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少し色の薄れた暖簾(のれん)を潜り、昔ながらの曇ったガラス引戸をカラカラと開けていく高坂さん。 「らっしゃい、おっ、優ちゃんおかえりっ」 途端に聞こえてくる快活な男の人の声。 「おっちゃん、ただいま」 親しげにそう返すのは、高坂さん。 私は、いまだ高坂さんの背中に隠れるように佇んでいる。 すると、おっちゃんはカウンターから身を乗り出して、 「お?珍しいね、優ちゃんが女の子を連れてくるなんて」 と、ニコニコしながら私を見る。 「こっ、こんばんは」 おっちゃんの言葉にフニャと頬が緩んでしまい、焦ったように顔を引き締めて挨拶をする。
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