10 #2

16/20
前へ
/35ページ
次へ
「そんなこと許さない、絶対に」 今まで見たこともない彼女の顔に、一瞬、言葉を失う。 その顔は、身の毛がよだつような、今にも人を刺し殺そうな顔をしていたから。 「あ……み……」 すると、今度は鬼のような形相から突然、にこやかな表情になる。 「そういうことだから、とりあえず、私の部屋に行きましょう」 「は?」 虚を突かれ、頓狂な声が出てしまう。 「はぁ……、言わなきゃわからないみたいね。 いい? あなたは由美を殺したの。 私の大事な妹を殺したの。 それは消せない事実。 あなたには、一生をかけて償ってもらう。 そういう約束だったじゃない? 今更、やめたいなんてふざけないで。 今まで通り、秘密にすればいい。 皆にも、花園さんにもね。 ふふ、私達秘書課は一人部屋なの知ってるでしょ? 去年も私の部屋で一緒にいたんだから。 さっ、行きましょう」 身振り手振りで、まるでドラマのセリフかのように淡々と残酷な言葉を並べる。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

407人が本棚に入れています
本棚に追加