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亜美の整った顔がグニャリと歪み、その瞳からはボロボロと身を知る雨が零れ落ちる。
ヒーヒーと、過呼吸のように荒い息遣い。
いつもの発作だ。
亜美は由美の事故から、時折、発作を起こすようになった。
「亜美っ、大丈夫、大丈夫だから」
その場に崩れ落ちるように膝をつく亜美を抱きしめ、背中を擦る。
「嫌よ、由美まで失って……、あなたまで失ったら……、私は生きていけない」
あの時の……、あの事故の日のように、体を震わせてむせび泣く亜美。
嗚呼……。
亜美は弱い人間だ。
わかっている、だから今までも離れられずにいた。
「しー、しー、大丈夫だから、俺は居なくならないから……、大丈夫だ、亜美」
そう言うしかなかった。
彼女を腕の中に抱き、彼女を宥めた。
そうするしかなかった。
――結局、その夜、俺は亜美の部屋で一晩過ごした。
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