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「……っるい」
月明かりの下、波の音を聞きながら、腕の中の彼女がポツリと言った。
「え?」
「高坂さんは、ずるいです」
言いながら、俺の腕にそっと手を置く。
「……ごめん」
ずるいのは、わかってるから。
「こっち、向いてくれないかな?」
彼女の耳元に唇をあてがって囁くと、体を竦めて首を大きく左右に振る。
「嫌です」
「お願いだから」
「……嫌です」
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