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真一の息子が保育園に上がる日、家族が見送る中、黒光りの30セルシオが走り出す。
春の香りにつつまれた街を走り抜けるセルシオの窓から息子が顔を出している。
真一も父親の顔になり、穏やかである。
保育園に到着すると真一と美果と息子は手を繋ぎ、蕾の桜木の門をぬけ、入園式場へ向かう。
息子は前列の席に、真一と美果は後列の席に着く。
入園式が始まり、子供達の元気な声がこだまする。
幸せとはこういうものなのだろう。
温かい時間は流れ、家族揃って帰宅し、家でも名残を楽しむように息子はその日を語る。
疲れて眠る顔もまた真一と美果には幸せを与えた。
これから待つ幸せな未来を疑いなどしなかった。
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