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寝室に着き、静かにドアを開いて覗き見れば誰もいなかった。次に足が向いたのは、母が弟の次に好きなガーデニングが出来る庭が一望出来る居間兼台所に静かに進む。何故静かに進むかと言うと、母とは違う、あれはまさしく父の気配がしたから。静かすぎる。父がいるなら、母もいる筈だ。母が帰って来ていないのなら、父が一番騒ぐ筈だから。居間兼台所に入る引き戸を音も立てずに少しずつ開き覗き見れば、驚愕な場面を目撃し直ぐ様引き戸を閉めた。引き戸の隣の壁に背を預け、荒くなった呼吸を静める。その間に先程目撃した場面を思い返す。
あれは、やはり…。
ぼくは、どうしたら良いか判らなかった。だって!あれは、どう見ても!
その後は、全く覚えていない。次に覚えているのは、自室の隅で泣いてた記憶しか覚えてなかった。
翌日の朝、ぼくは学校を休んだ。父が率先して葬儀社相手に話し込んだりして、母の葬儀の日と内容が着々と決まっていくのを放心した表情で見ていた。近所の人達や母の弟夫婦も立ち代わり来ては、ぼくに『残念だったね』『急だったね』と言いながら頭を撫でたり涙ぐんだりしていた。学校の方には、父が連絡したみたいで校長先生も来ていた。
そして、その翌々日に葬儀が決まった。突然亡くなった母の葬儀が始まる。そして、ぼくは葬儀の翌日から社会人になる日迄真っ暗闇の中を漂いながら生きていった。思い出せない程、余りにも真っ暗闇すぎて。何をしていたのか記憶にもなかった。ただ、近所の人達から見たら『不憫な子』に映ったのかも知れないけれど。
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