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  人は面白い。嫌な記憶程覚えていて、楽しかった記憶を消す事が出来る。 幼く未熟なぼくに、無情にも時間は流れていく。母の葬儀の後、今度は父が行方不明になった。最初は、仕事上連絡取れなくなる事もあり放っておいた。いつか、帰って来るだろうと。然し、いつ迄経っても帰って来ないどころか仕事場にも上司にも連絡さえせずにいる。真面目な刑事の突然の失踪に、事件に巻き込まれたかと騒ぎマスコミに追われる同僚達。それをニュース等で見た記憶がある。マスコミに失踪した刑事の住み処(か)を伏せていた為、ぼく達はマスコミに晒される事もなく平穏無事にいたのだけれど。 でも、それは表向きの話。ぼくは、葬儀の後やはり黙っている事が出来なかった為、父の上司がいる警察署に行き被害届を提出した事がある。冗談でもなく本気で。早速、父の上司に呼び出され聞かれた。届に記載してる事に嘘偽りは無いのかと。 「ぼく、見たんです。父が母の首を絞めてる所を。信じたくなかったんです。でも、見てしまった以上黙っているわけにはいかなくて。なのに、父は葬儀も率先して手伝うから。葬儀の後父を外に呼び出して聞いたんです。そして、自首を求めました。そうしたら、諦めたらしくて『判った』って。なのに行方不明になるなんて。」 ぼくの告白に、父の上司は唸るばかり。 「その時、母の弟にあたる叔父さん達二人も聞いて知ってます。ぼくが自首を求めてた時に、傍で父を見てましたから。」 その言葉に、やっと警察は捜査してくれた。母の遺体は火葬前だったので、火葬場に行く前に検死される事になった。 それを知ってるは、叔父さん夫婦とぼくだけ。  
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