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  その思い切った行動で近所では有名になったけれども、その場所があるからか近隣での評価は高い。屯(たむろ)する不良がいなくなった、とか。万引きが減った、とか。 今迄育ててくれた恩があるからこそ、親戚だからといって甘えるなんて事はしない。お金の事で困らせてはいけない。そう思うからこそバイトを探していた。大学に行ってた時は、勉強に集中していた。成績が上がると、叔父さん夫婦が喜ぶから。妹や弟の事で迷惑かけているから。今、妹は少し反抗期で我が儘で部活以外でも朝帰りが多い。弟は大人しいが人見知りで引っ込み思案もあり外で遊ぶよりも家でゲームするのが多い。二人とも一応携帯電話は持たせてあるが。勿論ぼくも持っている。パケ代とか考えて堅実に慎ましく生活するぼくとは逆に妹達は真夜中でも長電話したり有料サイトにアクセスしたり。妹達には内緒だが携帯電話を渡す前に使いすぎないように色々設定はしてあるのだけれど。 兎にも角にも、叔父さん夫婦にこれ以上迷惑はかけられない。 だからこそ、早くバイトが見つかって嬉しいのだけれど。もっと、嬉しい事が見つかったのもバイトの用事で外にいた時に起きたのだけれど。 喫茶店は、とてもシンプルなデザインをしている。色が五月蝿いわけでもなく、個性的な色合いでもない。余り色とか詳しくはないのだけれど、白い空間に椅子とテーブルは黒、テーブルに掛けられたクロスは真っ白で角(すみ)にうっすらと獣の足跡が。汚れではなくて、そういうデザイナーらしくて。白い壁には蔦のような造花を這わせて、白い天井から吊るされた灯りは銀色の太い針金で鳥小屋が造られていて、その中にランプのような灯りが入っていた。  
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