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  有り得ない事は、有り得ない。 人間が主流の世界にだって、探せば多分(たぶん)能力を持って生まれた者もいるだろう。 類は友を呼ぶように、能力者も同類を呼ぶのだろうか。 終わった、やっと。ぼくの幸せを妬み邪魔した奴等は、もういない。後は、彼女の帰りを待つだけ。いつ帰って来てくれるか判らない、いつ逢いに来てくれるか判らない、ぼくの最愛の彼女を生きた屍(しかばね)のように待つしかない。彼女を奪った奴も、ぼくの幸せを奪った奴等も、もういない。 それでも、ぼくは生きる。彼女が迎えに来てくれる迄。  ―――――…   事の始まりは、あの家から全て始まった。 あの頃のぼくは、家から出たくて堪らなかった。でも未だ幼すぎたぼくには、家から出る事は不可能に近かった。学校と家を往復する日々、料理を作れない母に代わって朝昼晩料理を作る日々は良くも悪くもない思い出。学校に行っている間ぼくよりも幼い弟や妹達は隣家に頼むのは必ずぼくの仕事だった。刑事だった父は家の事を母に任せたまま仕事する人だった。母は父を愛していたが、父は母を愛してなかった。それでも、母は表面上良妻賢母を演じ、家では家事を一切せず幼い弟を特に可愛がった。ぼくと妹を愛さなかった。そんな家に、ぼくは縛られていた。―――あの日迄は。  
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