第5話

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も、だめだ、あたし。 素面(しらふ)じゃいられないっ。 常務の甘い囁きから逃げるように グラスをがっと掴み、 残りのモスコミュールを全部飲み干した。 「―――…くくっ」 突然、 常務が口元を掌で押えて 笑いを必死で堪えているのを見て、 はっと我に返った。 ま、ま、まさか。  またなの!? からかってるだけなの!? あたし、また、騙された!? 鍋にかけたお湯が ぐらぐらと沸きだすように 怒りで体が揺れて来た。 「い、い、一体、 今のはどこからどこまで本当なのよっ!? それとも、全部、嘘なの!?」 あたし、 絶対この人のこと好きじゃなかったと思う。
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