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「……ふーん」
桜崎の顔から笑みが消え、こちらに一歩一歩近寄ってくる。
これって、まずい状況よ……ね?
後ろに下がろうとするも、既にシンクの端に追い詰められていた。
もう逃げ場がない。
桜崎との距離、あと30センチ。
「僕がはなさんを思うがままにできるという契約を結びました」
……。
「え、今なんて?」
桜崎がもう一歩、踏み込む。
桜崎との距離、あと20センチ。
顎を持ち上げられて、桜崎と眼が合った。
……体が動かない。
この人の眼が怖い。
「はなさんが僕のいうことを何でも聞くという意味ですよ」
「おじがどうしてそんな」
桜崎の人差し指が私の唇をふさぐ。
「ということで、しばらくお世話になりますね、はなさん」
と言うなり、桜崎は子犬のように笑い、前髪をかき上げながら玄関へ向かった。
え、ちょっ待って。
あわてて桜崎のシャツをつかんだ。
振り向いた桜崎は、私の頭を撫でながら、
「心配いりませんよ? 服、取ってきますね。すぐ戻りますから」
あっけに取られている私をよそに、部屋を出て行った。
「何なのよ、もうっ!」
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