恋に焦がれ恋に泣く

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□ □ □ 今日は一段とまつ毛盛ってるわね、小林さん。 挨拶代わりに右手を上げて、社長室の扉を開けた。 「おかえりなさいませ、社長。ご連絡いただければお迎えに上がりましたのに」 私も今日ほど迎えに来て欲しかった日はないわ、森野。 スマホを自宅に忘れてきたのは痛かった。 森野にコートとカバンを渡して、私専用の椅子にダイブした。 靴を脱いで膝を抱えてうずくまる。 この背もたれのもふもふ感、たまらないわー。 「はなちゃん、こっちも温かいよぉ」 大男が両手を挙げて、中腰になってる。 ――ごめん、森野。疲れすぎてつっ込めない。 「随分お疲れのご様子。お見受けするにコースはSかAといったところでしょうか」 はい、そうですよ。だから寝不足なんですよ。 「森野、エスプレッソ倍量で入れて」 「……すぐにお持ちします」
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