恋に焦がれ恋に泣く

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――私が、泣いた。 人前では泣けない私が、ユウタの前で2回も泣いた。 ……このあと、どうしたらいいのかしら。 ただ今、ユウタの腕の中。 無性に恥ずかしくなって、ユウタの肩に顔をうずめた。 「……ねえ、ユウタ」 私らしくない、甘い声。 私の背中をさすっていたユウタの手が、止まった。 「はい?」 身体を離して、ユウタを見上げた。 切れ長でつり目。 無表情だけど、不思議と怖くなかった。 ゆっくりとユウタの両頬を包んで、顔を近づける。 そして思いきりその手に力をこめた。 「どうして人のスマホ、触ったのよ!」 どうだ、これなら逃げられまい!! 「いたたたたたたたっ、ぼぶちはぶ!」 ぷっ、おかしくなってユウタの顔の前で吹いてしまい、口元を押さえた。 ――しまった、手を離してしまった!
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