恋に焦がれ恋に泣く

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「詰めが甘いね、はなさん」 そういって、ユウタは私の左頬をつまんだ。 「おなか空いてますって、顔に書いてある」 左手の人差し指で私のおでこを小突いた。 いたっ。 どこに書いてあるのよっ! 「うそちゅき」 あぁぁーっ、穴があったら入りたい!!! ええい、もう手を離さんかいっ。 ユウタはおかしくてたまらないのか、おなかを抱えて笑い始めた。 「はなさんの顔、真っ赤。かわいく見える、ぷっ」 なっ、かわいい!? 両手で頬を押さえた。 さらっと言うじゃないの。 ――頬が熱くなる。 あ、心がちょっと軽くなってる? 「ところで、今日はうちに帰らないから」 ユウタの笑い声が止まった。 「なんで?」 社長室にあるカバンから参考文献を数冊出して、ユウタの荷物の横に置いた。 「大学のレポートの期日が迫ってるの。だから今夜はここで徹夜するわ」
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