恋に焦がれ恋に泣く

31/83
前へ
/83ページ
次へ
トントントン ユウタが社長室に一番近い机を、爪で叩いた。 「ここ、森野サンの席、借りてもいいよね?」 ユウタは紙袋からハンバーガーを出して、私に見せた。 ――食べるくらいなら、いいか。 「どうぞ使って。あ、森野ね、とてもきれい好きだから汚さないように気をつけて」 社長室に戻り、コーヒーカップを二客用意した。 「失礼しマース」 ユウタは社長室の入り口に立って一度頭を下げてから、私に近づいてきた。 ――意外と礼儀正しいやつ。 「僕がコーヒー入れるから、はなさん食べて? おなか空いてるでしょ?」 ――優しいじゃない。 「差し入れありがとね。今朝から何も食べてなかったから、助かったわ。一応お礼言っておく」 じっと見られると、恥ずかしいじゃない。 ジャンクフードは普段食べないけれど、ユウタの気持ちが嬉しかった。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加