恋に焦がれ恋に泣く

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「おはよ、森野サン」 机の上のパソコンをカバンに入れて、ユウタは私のそばまでやってきた。 「行ってくるね、僕の抱き枕」 ユウタは私の頭を自分の胸に押し当てた。 「ここは会社だからっ」 顔を上げてユウタの目を見た。 「いってらっしゃい、でしょ?」 いやいや、笑顔で言われても困るから。 それより大学、遅刻するじゃないのっ! 「いってらっしゃいのキスでも、僕はいいけど?」 抱き枕がキスするんかいっ! 「イッテラッシャイ」 無表情に棒読みで言った。 ユウタは私の頭を一度なでてから、森野の机の上をきれいにして、「じゃあね」と出て行った。 「社長、学校マデオ送リシマショウカ?」 森野まで、無表情で棒読み。 ――怖いから止めて。 「走ったほうが早そうだから、一人で行くわ」 「はなちゃん!!」 呼び止められて振り向くと、森野は人差し指を首に当てて言った。 「ここにキスマーク付いてるわよぉ」 うそっ!? 慌てて首を押さえた。 「なんてね。お気をつけて。遅刻しますよ?」 う、もう、いじわるなんだから。
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