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ふーっとため息をついて時計を見ると、既に18時を過ぎていた。
「お疲れ様、今日はもう上がっていいわよ」
「お先に失礼します」
「また明日、よろしくね」
スタッフに声を掛けて、社長室の扉を閉めた。
都心に位置する超高層ビルの一角にある、真新しい事務所。
「いいんですか、社長。アルバイトに甘すぎですよぉ」
耳元でぼそりつぶやくのは、190cm超えの大男、用心棒じゃなくて、一応秘書。
「……森野、何度言ったらわかるの? ささやき禁止!」
あぁ、耳がこそばゆいじゃないのっ。
「これは失礼しましたぁ、はなちゃん!」
ん、その戦闘体制、今日もくる?
くるの?
きたーーー!!!
大男に羽交い絞めされる、いたいけな少女の図。
なはずはなく、
「も、森野、ぐるしいっ、離せーー」
「いいじゃないのぉ、誰もいないんだしぃ」
腕、腕、それと顔も地味に痛いから。
「何言ってるのよ、誰かに見られたら、私の威厳に」
「いらっしゃませ、お待ちしておりました」
森野の声がワントーン下がり、私の背後の人物に話しかけた。
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