恋に焦がれ恋に泣く

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「契約内容? うーん、必要な時に必要な話をする、じゃだめ?」 首をかしげて、無邪気な笑顔をみせる桜崎。 それにしてもよく笑うわね、そんなに楽しい状況? ……そういえば、あいつもよく笑ってたっけ。 だからだろうか、目の前の笑みがとても嘘くさく感じる。 恋を終わらせたばかりの私だから、そう見えるのだろうか。 すりガラス越しに、相手を見ているような気分。 相手の本心を上手い具合にぼやかして、こちらが見なくていいものをさらりと隠してしまう。 「大変お待たせしました。こちらはジャマイカ産の貴重なブルーマウンテンでございます。卓越した香気と調和のとれた味わいと口当たりをお楽しみください。そしてスィーツはアーモンドキャラメルタルトでございます。アーモンドとキャラメルとバターのハーモニーをご堪能頂けるかと存じます」 「桜崎様、森野の入れるコーヒーは格別なんですよ、どうぞ」 こんな小僧に、このコーヒーの味が判るのかしら。 桜崎は身を乗り出してコーヒーカップを持ち、香りを嗅ぐように一度口元で止めてから口をつけた。 「僕は苦味のあるハワイコナの方が好きかな」 桜崎は肩にようやく届くかというストレートボブの髪をかき上げて、森野にくしゃっとした笑顔を向けた。
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