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あれから1年が経った。
今ではそんなに人が嫌いではない。
彼のおかげだと思うのはしゃくだが、彼に出会って視野が広くなったのは事実だった。
忙しい日々の合間、私は今でもあの丘へと足を向ける。
晴れた空がまぶしい。
私はここで、勝手に消えたヤツに届けばいいと独り言を言う。
「今私何してると思う?カウンセラー目指して勉強なんかしちゃってるのよ?」
人嫌いな私が人のために役に立とうと努力してるなんて、本当どうかしてる。
「でもね、嫌じゃないのよ」
反抗してばかりで周りを見れてなかっただけで、本当は世界はそんなに捨てたものではなかった。
「ねぇ、生きるのって辛いわよね」
たまに泣きたくなることもある。
けど、負けないからね。
「ねぇ、最後に何を言いかけたの?」
『俺、けっこうアンタのこと好きだった。だから…』
そんな言い方ってかなり意味深じゃない?
“けっこう好き”のあとに続く言葉なのに。
「どーせなら全部言ってからいきなさいよバー
カ」
気になってしょうがないじゃない。
私だって、アンタのことは嫌いじゃなかったわよ。
結局彼には名前すら聞かなかったけれど……
あの日、きっとふたりは愛に触れた。
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