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複数人の男に一人囲まれた少女は、傷ついた顔でうつむいていた。
「どいて、くれませんか」
うつむいたまま、彼女は淡々とした声で言った。
まだ十三か四歳といった年頃の少女は、その見た目どおり中学の制服をまとっていた。白いブラウスの背中を覆う黒髪は長く、つやがあって美しい。
少女を囲んでいた男のうちの一人が、彼女の顎を掴んで上向かせた。初めて受けるその扱いに、少女は品のある顔をしかめる。年のわりに気の強そうな目が、放せと言いたげに男を見上げた。
「好みじゃねえがきれいな顔だな」
余計なお世話と言わんばかりに、少女は手を撥ね退けた。
そこはあまり人目のない、建物の勝手口ばかりが連なる裏路地だった。繁華街の一歩外は、昼間だというのに人目が少ない。助けを呼んでも、誰も来ないかもしれなかった。
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