115人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前に映るその景色は、とても懐かしさを覚える場所だった。
そこは俺が幼い頃に住んでいた家。
家族三人で過ごしていた、思い出が沢山詰まった場所。
まだ俺が、幸せだった場所。
今ではもう誰も住んでいないはずのその場所に、どこか見覚えのある幼い少年の姿があった。
泣いて、いるのだろうか?
小さな両手で顔を覆い被せ、俯きながら部屋の隅で小さく座っているその少年は、か細く震えた声で何度も何度もこう呟いていた。
お父さん、母さん。
どうして、どうして僕を置いていっちゃったの?
......あぁ、そうだ。
これは、昔の俺だ。
少年の救いを求めるようなその悲痛な訴えに、あの日消しさったはずの思いがまだ胸の内に在るのだと、気づいてしまった。
あぁ、俺はまだ救われていなかったのだと
俺は未だに〝救われたい〟と願っているのだと―――。
最初のコメントを投稿しよう!