02.昔の自分

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* * * 「……さん……したよ」 深い暗闇の中で、誰かの声が聞こえた気がした。 「……さん!着きましたよ!お客さん!」 その声は次第に大きくなっていき、それと共に強い揺れが体を襲う。 そこで俺はようやく止まったままだった意識を取り戻した。 「……あぁ、すいません、ありがとうございます」 まだ覚醒しきっていない頭を無理矢理働かせて、少しずつ今の状況を把握していく。 どうやら俺は帰りのタクシーの車内で眠ってしまっていたらしい。 タクシーの送迎で寝るなんていつ以来だろうか。普段なら絶対にしない行動に、我ながら少し驚く。 自分で思っている以上に体は疲れているみたいだ。 「いや、いいんだよ。お客さんうなされてたから心配しちゃったよ。それよりも、もう着きましたよ?」 運転手からそう告げられて、ふと窓の外へと目を向ける。 見てみるとそこは既に俺のよく見知った景色へと変わっていて、大分早い段階で寝てしまっていたのだと気付く。
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