02.昔の自分

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タクシーを見送りながら、最近の変な事件とやらを思い出してみる。 そう言えばこの前、この国の色んなところで〝変な生物を見た〟っていうニュースがテレビに流れてたな。 なんでも豚に羽が生えたヤツとか二足歩行の犬とか。 いやいや、どこぞのファンタジー物語だよって。 被害があったわけでもないので警察もそこまで大きくは動いていないらしいけど、もし本当にいるなら少し見てみたい気もする。 まぁ、どうせただの悪戯なんだろうけど。 そんなことを考えながら俺は、通りに面した二階建てのアパートの階段を登り、一番奥の部屋へと向かう。 ドアの横に設置された〝神埼 蒼真〟という名札の貼られたポストを開けて、中身を確かめてから部屋の鍵を開ける。 部屋の明かりを点けてから俺は、誰にともなくただいまと呟いて中へと入った。 まぁこれで返事が返ってきたらそれはそれで事件なんだけど、どうやらそんな心配は無用みたいだ。 明るくなった部屋を見渡すと、今朝、俺が家を出た時と同じ状態のまま物が置かれていた。
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