02.昔の自分

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部屋へと入ってからすぐ様着ているスーツを脱ぎ捨て、部屋着へと着替える。 鞄を壁にかけてあるフックに投げるように引っ掛け、部屋の中央に置かれた二人掛けの黒塗りのソファへと、少し雑に腰をおろす。 ふと時計を見ると、時刻は既に十二時を過ぎていた。 またこんな時間か。最近その日の内に帰ってきた記憶があまりないな。 理不尽とも言える仕事量を押し付けられ、いつも不満と戦う毎日。 やらなければ〝最近の若いやつは〟なんて聞き飽きたフレーズから始まる説教が延々と待っている。 かといって一度「はい、やります」なんて言ってしまえば、周りの人達はあれもこれもと、沢山の仕事を押し付けてくる。 高校を卒業してすぐに就職し、もうすぐ二年が経つが、正直もう疲れた。 ただ無感情に。ただ無感動に。 まるで操り人形みたいに生きる日々の連続に「俺の生きる意味ってなんだろう?」だなんて、一生答えの出ないような問答をただひたすら頭の中で繰り返していく。 ……だからって自分から命を捨てるほどの勇気もないんだけどさ。 そんなことを考えながらソファから立ち上がり、寝る支度をするために洗面台へと向かう。 風呂は、明日にしよう。 今日はもう疲れた。
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