01.日常

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「あー……寒っ」 駅の改札を抜け、自身の吐く息が白く染まるのを眺めながら俺は誰にともなくそう呟いて、首に巻いたマフラーに顔を埋める。 真冬に比べ幾らか日が伸びたとは言え、三月半ばのこの時期だ。夕暮れ時の寒さはまだまだ身に堪える。 それに加え、先日降った大雪があちらこちらに残っており、見ているだけでこちらの体温が奪われていくような気もする。 いやいや、もう三月だぞ? 少しは自重しろよ日本の冬。 これだから冬場の営業回りは嫌いなんだ。 そう心の中で愚痴りながらも早くこの寒さから逃れようと、普段より少し早い足取りで歩き出す。 このまま家に帰れればとても楽なのだが、俺にはまだ会社に戻って日課である事務仕事をこなすという試練が待っている。 残念だが、まだまだ帰ることは出来そうにない。 会社までそう遠くない道のりを、寒さに身を縮こませながら歩いていく。 まばらに行き交う人々も皆同じように背筋を丸め、寒さに堪えながら歩いていく姿が目に映る。 その中で一組の家族の姿が俺の視線を奪っていく。
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