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父親と母親、そして小さな男の子と、どこにでもいるようなごく普通の三人家族。
男の子は父親に肩車をされていて、満面の笑みをその顔に浮かべながら、父親に向かって話しかけている。
父親も同様に笑いながら我が子との会話を楽しんでいるようで、その二人の隣を母親がとても優しげな瞳で見つめながら、並んで歩いて行く。
まるでこの寒ささえも溶かしてしまうような暖かいその光景に、何故か俺の胸は小さな痛みで締め付けられていた。
それと同時にふと、自分の幼かった頃の記憶が脳裏に浮かんでくる。
あぁ、俺にもあったけ。
ああやって笑って過ごしていた頃が。
あの頃は子供ながらにだが、確かに幸せだった。
休みの日には遠出をしたり、近くの公園で遊んだり、夕飯の買い物について行ったり、みんなでご飯を食べたり......。
今ではそれが叶うことはもう無い。
二人はもう、どこにも居ないから。
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