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階段の途中で膝を抱えて私を見る妹は、視線を逸らすように横を向き、私と目が合わないように背中を向けた。 正に息をつくための、私にとっては一瞬の休憩のつもりの体位変換だった。 隣の家の畑から、嫁いでまだ日の浅いお嫁さんが、我が家を気にして窓の向こうからチラチラとこちらを見ている。 助けてほしかった。 無意識に居間の出窓に向かって起き上がろうとしていた。 「このバカ!何を企んでるだ!」 「立ちやがれ!立て!」 母親は見逃さない。 私の気持ちが母親から離れたことを。 鼻血は粘りがあって、すぐにネチネチとして固まり始める。 私の顔には幾筋も血のラインがこびりつき、鼻の中は熱いままだ。 「ここへ座れ!」 居間の畳の上を指し、母親は新しいタバコに火を点けた。 時間は八時を少し過ぎた。 ポンキッキーが始まっていた。 集団登校の私の班はとっくに出発してしまっただろう。 「ちょっと貸してみろ!」 母親は娘の右腕をぐいっと引っ張った。 殴られたり蹴られたりしていれば、母親は他のことを考えていないからひたすら耐えればよい。 だが、こんな静かな展開はこれから起こることが予測できず、ただ母親の言いなりになるしかない。 「な、な、に、す、する、する、の、お…」 泣きしゃっくりが止まらないのと、恐怖が頂点に達しているせいで、うまく喋れない。 「い、いた、いたい、こ、と、は、い、いやだ、いやだ…や、やめ、…てっ!」 正座をして、母親は私と向き合って、タバコの先を赤く光らせている。 「いや、い、いやだーっ!い、い、いや、だよ、やめ、…てっ、やめ、…て…ください…おね、おねがい、おね、おねがい、しますーっ!」 ぎゃーっ、ぎゃーっ、ぎゃーっ 最後は絶叫だった。 手の甲はタバコの火を受けて、皮膚は灰色に変わっていた。 熱さはなく、鋭い痛みを全身で受け止めながら、私は大声で泣いた。 うわぎゃぁぁ、う、う、うわぎゃぁぁ…っ! あぎゃぁーっ、うわうわうわぎゃぁーっ! 水で冷やしもせず、タバコの灰を落としもせず、母親はニヤニヤと薄笑いをしながら、苦しむ小学校2年生の娘を眺めているだけだ。
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