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 翔琉と公園に行った翌日、沙和子と類が開店前の紗々に出勤すると店内は騒然としていた。 キッチンの方から女の怒鳴り声が聞こえる。 カウンターとキッチンを繋ぐドアの手前で、ネネと友理奈が中へ入ろうかどうしようかと躊躇していると、その足元にボウルとジャガイモが飛んできて、二人は「きゃあ」と悲鳴をあげた。 カウンターの端では面倒くさそうに、マミが煙草を吸いながら座っていた。 「・・・何、この状況」 類がマミの後ろで呟くと、マミは呆れたような顔で座っていたスツールを回転させ、類を見上げた。 「香織さんがカヨさんの彼氏と店外デートしてたってバレて大揉め。類くんも一昨日見てたでしょ。田中さんと香織さんが肩寄せ合ってなかよーくしてるのを見てたカヨさんが、超荒れて、飲み散らかしてたの」 マミは艶々と光る唇から細く煙を吐いた。 こういった状況に慣れているのか、さして興味もなさそうにそう言っただけで、キッチンの方を見ようともしない。 「・・・ああもう、何やってんだか」 類はキッチンへ向かうとネネと友理奈に、端へ避けろと手で合図をする。 二人は類を見て、少し安心したような顔をした。 沙和子も中の様子が気になったので、後へついて行く。 「あんた知っててわざとやってんの!?信じらんない!マジ性格悪い!」 カヨが目の前の香織という女にそう怒鳴ると、香織もカヨに怒鳴り返す。 「単にあんたが飽きられただけでしょ!あたしがあの人誘ったわけじゃねーんだよっ」 「はあ!?」 「大して好きじゃなかったけど、ヤらせてくれるから付き合ってたって言ってたし!」 香織がそう叫ぶとカヨの顔色が変わる。怒りで、赤を通り越し青くなっている。 カヨは近くにあった薄力粉の袋を掴むと、香織に向かって投げつけた。 香織は思わず目を瞑ったが、薄力粉の袋は香織には当たらなかった。 黒いスーツに真っ白な跡を数ヵ所残して、袋はぼすんと床に落下した。その拍子に袋の口が開いてキッチンの床は真っ白になった。 「はい、終了ー」 類が少し間の抜けた声でそう言うと、カヨは小麦粉で白くなった類の背中から目を逸らすように横を向いた。 香織も自分を庇うように目の前に立つ類と目が合うと、気まずそうに俯く。
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