1.階段

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でも、他の階段を使って、 ダッシュでここまで来たのなら、 俺を脅かそうとしているのなら。 それなら、ありえない話じゃない。 あの噂を聞いたのだって、部活の先輩からだったし。 全部仕組まれていて、 俺にドッキリ仕掛けてるんじゃないか? 多分、手すりの位置的に身長も俺と同じぐらいだ。 似たような背格好の奴は、部内に何人もいる。 やっぱり、そういう意図で、 俺に悲鳴でも上げさせたいんだろう。 全部、やらせ。 なら、大丈夫だ。 そう思って、止めていた足を動かそうとした瞬間。 踊り場の誰かが、 笑ったような気がした。 1段、2段、3段。 上がっていくと、ある事に気が付いた。 ……光に遮られない、足元。 そこに見えるのは、体育館用の上履きだ。 それは、別におかしい事じゃない。 だけど、そこに書かれた落書き。 それが何故か、俺が先輩たちにやられた物と同じだ。 置きっぱなし防止用に、 先輩たちは後輩の上靴に、それぞれ違う落書きをするのが、 うちの部の、入部後の恒例らしい。 そうやって俺の靴にも書かれている、 決して他の奴とは被らない、落書き。 それが、踊り場の奴の靴にもある。 ……じゃあ、まさか。 噂は本当で、 この上にいるのは。 もう1人の、俺?
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