1.階段

6/7

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
振り向く事なら、出来るだろうか。 あるいは、目を閉じる。 こちらへ向かってくる、 あの誰かを避ける、簡単な方法。 それを、声をかけられて、ようやく思い出せた。 聞き覚えのある、その声の方へと顔を向けた。 すると、声の主は、俺の答えも待たずに、話を続ける。 「死んじゃうんだよ。 ドッペルゲンガーに会うと」 ……え、じゃあまさか、俺、死ぬんですか? 振り向いた先に居た、 同じ部活の先輩に、そう尋ねようとした。 だけどやっぱり何かを言う前に、先輩は次の言葉を紡ぎだす。 「まあ、嘘なんだけど」 ……『嘘』……? じゃあ、やっぱりこれは、 部活の先輩たちによる、悪戯? ここまで来る1年は、じゃんけんで決めた。 だから、俺に対する嫌がらせでは、無い筈 ……あれ、じゃあ上靴とか、合わせられないんじゃ……? その事に気が付き、 もう1度、怖いけれど、上を見た。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加