2.跳び箱少女

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「こんな話を知ってるか?旧校舎の体育倉庫にはね……」 「どうせ嘘なんでしょう?さっさと柔軟終わらせましょうよ」 人の背中を押しながら、いつものホラ話をしようとする先輩をいなす。 この人――安藤(あんどう)先輩は、 やたらと俺に構ってきては、学校の怪談系の話をしてくる。 そして最後にはいつも、 『嘘だけど』 そう言って、すべてを嘘にしてしまう。 嘘じゃなく、 また、自分に降りかかってこない事なら、俺だって話は聞きたい。 学校の七不思議とか、そういう事が好きな方だからだ。 ……まあ、この学校に七不思議は存在しないらしいけど。 「っていうか、2年の人としてくださいよ」 毎度毎度、何故か部活の始めと終わりの柔軟体操の時に、俺を誘ってくる。 「いや、1人余るだろ?2年も、1年も」 確かにそうだ。 でもそれなら、俺じゃなくてもいいだろうに。 何度かぶつけるこの質問に、先輩はこうも答えたりする。 『なんかさ、合うんだよね。波長ってやつかな?』 ……よく解らないけど、 この人自体がよく解らない所為か、 部活仲間の友人は、いつも俺を犠牲にし、自分たちはさっさと同学年で纏まってしまう。 そしていつも、この人と組まされる。 1度ぐらい、ずっと背後で怪談話される俺の境遇に立ってみろ。 しかもタイミングよく突然強く押してくるから、心臓に悪い。 せめて柔軟中以外にして欲しいよ、本当。
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