Joke -ウラハラ-

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「飯田がそう決めたなら、新しい志望校に向けて頑張れよ。」 そう言って大政先生は席を立ち、私に退席するよう促した。 しかし・・・。 「ああ、飯田?」 「はい・・・?」 面談室を出ようとした時だった。 ようやく面談が終わり、気まずい事実を誤魔化せたと安堵しかけていた頃。 私を呼び止めた大政先生の口から、やんわりとこう忠告されたのだった。 「・・・あまり親御さんに心配掛けるなよ?」 この言葉は、私の『どこ』に対して言っているのだろう。 志望校を急変させた事? それとも・・・!? 気まずさを誤魔化すため、顔を引き攣らせながらも笑顔を作る。 「大丈夫ですよ!」 ・・・全然大丈夫じゃない。 自分の口から出た言葉にツッコミを入れながら、逃げるように職員室を後にした私。 どうしよう・・・。 もしかしたら、大政先生は全ての事実を知っているのかもしれない。 私が志望校を変えた理由。 その全てが『恋愛』であるという事に・・・。 元喜と付き合うまでは、比較的真面目な優等生だった。 成績も悪くなかったし、学校にも真面目に通っていたはずだ。 だけど今は・・・。 学校にはちゃんと来ているけど、偏差値は少しずつ落ちている事は明らかだ。 みんなが必死に勉強しているこの大事な時に、私は恋愛に呆けて何もしていないのだから。 「どうしてみんな、わかってくれないの・・・?」 もっと自由になりたい。 誰にも束縛されず、咎められない場所に逃げたかった。 煩い親や、私の将来を気にする先生方。 それから、成績の良い私をライバル視しているクラスメイトも・・・。 元喜さえいれば、もう誰も要らない。 そう思ってしまう程、私は彼の事が大好きで・・・。 忙しい元喜と会えるのは、多くて週に2、3回程度。 あとは彼のいないあの部屋で、テレビの画面越しに彼を見つめている。 それでも充分幸せだった。 彼の残した匂いを纏い、いつもより広いベットで彼の夢を見る。 そして時々は、テーブルの上に取り残された緑の箱の中身を悪戯し、タバコの匂いが残る彼のキスの味を想像した。
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