Joke -ウラハラ-

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―――ピリリリリ・・・ スマートフォンの着信音が鳴っている。 夕方のこんな中途半端な時間に電話を掛けてくるのは・・・。 充電器に差したままのそれを手に取り、私は着信の相手の名前を確認した。 「もしもし・・・。」 テンションの低い声で応答する私に、受話口から聞こえてくる声は不安感を顕にしていた。 ―――「もしもし、奏楽。今日、大学は?」 「今日は土曜日だよ。 講義は平日しかないって、前に電話で言ったじゃん。 ・・・で、何か用?」 ―――「ううん、特に用事はないんだけどね。 ただ、あなたの事が気になって・・・。」 こんな心配、私には必要ないのに。 家を離れたのに、どうしてまだ私に干渉するの・・・? 「別に、気にしなくていいって。 私は毎日楽しくやってるからさ。」 ―――「そう?それならいいけど・・・。 また高校の時みたいな事があったら、お母さん、心配で・・・。」 そんな母の優しさを有難いと思いつつも、口から出てしまうのは冷たく乾いた言葉のみ。 「大丈夫だって。心配しすぎ。 それに今は彼氏を作る気もないし、大学生活に慣れるので精一杯なんだから。」 ―――「でもね・・・、世の中はいい人ばかりとは限らないんだから。 誰でも簡単に、家に上げたりしちゃダメよ?」 「はいはい。わかってる。」 ―――「そう・・・、わかったわ。 それじゃ、お母さん、夕ご飯の準備してくるわね。」 「はーい。お父さんと世楽にもよろしく。」 母からの電話を切り、大きく溜め息を吐く。 過保護な両親の束縛が嫌で、高校を卒業して実家を離れたはずなのに。 それでもこうやって、3日に1回は様子を伺う電話が掛かってくる。 確かに私は、これまで両親に沢山心配を掛けてきた。 だけど私には、もう干渉される筋合いはない。 ただ1つだけ、悪い事を覚えてしまったけど・・・。 東京にいる家族の姿を頭に浮かべながら、テーブルの上にあったメンソールに手を伸ばし火を点けた。 山盛りになった灰皿には、これと同じキャメルのフィルターが丸太のように積み上がっている。 こうやってタバコを吸うようになったのは高校3年生の頃。 そして吸い殻を同じ方向に揃えて積む癖は、彼の癖が移ったものだった。
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