Joke -ウラハラ-

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――― 私の地元は、東京・葛飾区の金町。 埼玉県、千葉県との県境に近いこの地域は、下町の昔ながらの雰囲気が残る暮らしやすい街だった。 当時通っていたのは、この界隈で人気のあった私立の女子校。 都立高校を受験したが不合格。 滑り止めとして受験したこの学校に通う事となったけど、今ではこの学校に通う事ができて本当に良かったと思っている。 母校である『私立夢愛学園高校』は、可愛い制服と生徒1人1人を尊重する校風が有名で、私も在学中の3年間は自由で楽しい高校生活を送らせてもらった。 部活動はせず、高校に入学してから週に5日、柴又にある古民家カフェでアルバイトをしていた私。 アルバイト先のカフェはとても雰囲気が良く、オリジナルブレンドのコーヒーとマスターの手作りキッシュが美味しい事で有名な店だった。 当時話題となっていた『隠れ家カフェ』。 その客層は幅広く、私と同世代の学生から母より年上の中年層。 時には可愛らしい老夫婦や近所のマダムたちがお茶会を楽しんでいる姿もあった。 平日のアルバイトは、主に学校が終わってからの夜間が中心。 しかし土日等の休日は通しでアルバイトをし、高校3年生に進級する頃にはランチタイムからディナータイムまでの仕事をしっかりこなせるようになっていった。 夢愛学園は、特別進学クラスであるA組を除けば、さほど受験勉強に熱を入れる学校ではない。 私が在籍していたC組は普通科であり、その中でも私は比較的成績優秀な方だったから。 志望校を高望みしなければ、さほど急いで受験勉強に取り掛かる必要はない。 だから私は、高校3年生の秋までアルバイトを続けるつもりで、この日もカフェのホールを忙しく動き回っていた。 8月の下旬。 もうすぐ夏休みが終わろうとしていたこの時期も、まだまだ日差しが強く暑い日が続いていた。 「いらっしゃいませ!」 来店した客に愛想を振りまきながら、席に通しオーダーを取っていく私。 客のほとんどは夏限定の水出しコーヒーを注文する。 しかし彼はこんな暑い日でも、ホットコーヒーを注文していた。 「ブレンドと本日のキッシュ。 砂糖はブラウンシュガーを付けてね。」 この客の顔に、私は見覚えがあった。 そしてマスターも、彼の事をよく知っているようだった。
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