Joke -ウラハラ-

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柳沢さんの家は、柴又駅から徒歩10分程の場所にあった。 私のアルバイト先であるカフェとは目と鼻の先であり、周辺にはコンビニやスーパーもある便利な地域。 その一角にある商店の2階を間借りし、彼は一人暮らしをしていた。 「地元は愛知なんだよ。 豊橋ってわかる? 名古屋よりも東にある、静岡に近い所でさ・・・。」 所属事務所が公開していないプロフィールを彼の口から直接教えてもらった。 しかし、それを聞いたのは・・・。 「さぁ、風邪惹くからそろそろ服着なよ? 俺は一服してからシャワー浴びてくる。」 私をベットに残し、彼はリビングでタバコを吸い始めた。 ベットの上にいる私は裸体のまま。 そして体には、数分前まで密着していた彼の温もりが残っていた。 芸能人は、こんな事当たり前なのかもしれない。 知名度を餌にして、すぐに女の子に手を出してしまう。 ゴシップ好きの友達がいつも言っていた言葉。 その言葉の通り、私は柳沢さんに手を出されてしまった。 どうして私は、彼に付いて来てしまったのだろう。 そして、何故抱かれる事を拒まなかった・・・? そんな事を思いながら、床に散らかった自分の下着に手を伸ばしたその時だった。 「ねぇ、良かったら一緒にシャワー浴びてかない?」 ふわりと香った、彼のタバコの匂い。 タバコの火を消し、再び私の方へと近付いてくる彼。 そんな彼の表情は、いつもカフェで見せる笑顔と同じだった。 「はい・・・。」 私はこくりと頷き、彼に促されるままバスルームへと向かう。 その時触れた手は、この家に来るまで繋いできた温もりと同じ・・・。 「奏楽の手、やっぱり綺麗だな。」 バスルームの入口で彼が視線を向けたのは、露わになった私のヌードではなかった。 彼の大きな手に包まれた、華奢で指の長い私の手・・・。 「明日は学校が休みだろ? このまま家に泊まってくか?」 シャワーの飛沫を浴びながら、穏やかな表情で私に問い掛ける彼。 そしてその後の一言が、私の不安と後悔を綺麗に洗い流してくれた。 「良かったら、ずっとここにいていいよ。」 「えっ・・・?」 「いや・・・ごめん。 これからも、ずっと一緒にいて?」 「・・・はい。」
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