Joke -ウラハラ-

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――― 今までは普通の女子高生だった私。 時に目立った取り柄もなく、時の流れに身を任せながら高校生活を送ってきたはずだった。 しかし、カフェでアルバイトをしながら少しだけ受験を意識し始めていた頃、普通じゃない、秘密の関係が生まれた。 2年ぶりにできた彼氏は、一回りも年上の芸能人。 そして今の私は、忙しい彼と少しでも一緒にいたくて、家出同然で半同棲生活を始めていた。 用事がある時以外は、スマートフォンの電源を切っている。 それは、煩い親からの電話対応が面倒だったからだ。 だけど、問題が起こったら困るから。 一方的にだけどちゃんと母に事情を話し、その上で私は彼の元にいる。 だけど、受験を目前にした娘が男に唆され家を飛び出したとなれば、勘当同然である事は間違いなかった。 それでも彼と一緒にいたくて、私は人生の全てを彼に捧げる覚悟をしていた。 だけど、現実はそう思い通りにはいかない。 そしてプライベートの彼は、テレビの画面越しに見るおチャラけたお馬鹿キャラではなく、真面目な考え方のできるしっかりとした大人だった。 「奏楽さ、ちゃんと大学には行きなよ? 俺に会いたいのはわかるけど、自分のやんなきゃいけない事はちゃんと全うして。」 「でも・・・、私は元喜と一緒にいられればそれでいいんだもん。」 「そんなワガママ言って・・・。 そりゃ、俺だってお前と一緒にいたいよ。 だけど、この先ずっと一緒にいるなら、少しくらいの我慢は必要じゃないか?」 「・・・そっか。」 彼の言う事には、素直に従う私がいた。 それは、彼に嫌われたくないが故の服従と、大人である彼への信頼。 「わかったよ。 ちゃんと少しは勉強する・・・。」 少しふて腐れながら口を尖らす私に、彼は優しい眼差しを向ける。 そして、大きな掌で私の頭を優しく撫でてくれた。 「奏楽が受験勉強を頑張るのと同じだけ、俺も仕事を頑張る。 だから、これからも一緒に頑張っていこう・・・?」 「うん・・・、ありがとう。」 私の返事を確認し、彼は安心したようだ。 テーブルの上に置かれていたタバコに手を伸ばし、それを1本取り出し火を点ける。 緑のボックスに詰まったメンソール。 そしてその向こうには、灰皿の中に積み上げられた丸太のような吸い殻。 「ねぇ・・・、それって、美味しいの・・・?」
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