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「同情か?」
「はい?」
「無実の罪で疑われた宮園君を可哀想だとでも思ったか?」
薬師堂先輩が長机の上のプリントを指で弄ぶ。
「同情なんて軽い気持ちで宮園君に近付いたら、石渡君まで痛い目をみる事になるぞ」
「それは、どういう意味ですか」
俺は宮園様を一度も『可哀想』と思った事なんて無い。
ただ、心配しただけで。
もし翼がこんな状況になっても、俺は同じように心配したと思う。
という事は、宮園様は友達なのか?
「宮園君とは同じ中学だったんだ。だから多少は事情を知っている」
寮長がせっせとホチキスで留めたプリントの束を拾い上げ、薬師堂先輩は無情にも「曲がってる。やり直せ」とプリントを寮長に投げつけた。
「中学の時、宮園君と仲の良かった友人がケンカに巻き込まれ、暴行を受けて入院した」
「え……?」
「自分の所為で友人が怪我をしたのがショックだったんだろうな。それから宮園君はその友人とも離れ、誰も近付けなくなったらしい」
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