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「お前のようなのが傍に居たら、宮園君も少しはマシな人間になるかもな」
「薬師堂先輩、宮園様を心配してくれてるんですか?」
「俺は余計な仕事を増やしたくないだけだ」
中学の時の宮園様の事情を知ってるからこそ、気にかけてくれてるのかも。
薬師堂先輩も、悪い人じゃないんだよな。
「ズルイ、やっくんばっかり『先輩』って呼ばれて。オレも『秋人先輩』って可愛く呼ばれたいー!」
作業に飽きたのか、手にしたホチキスをカチャカチャさせて寮長が会話に割り込んできた。
「解りました、山本先輩」
「『秋人先輩』って呼んで」
「山本先輩」
頑なに名字で呼んでいると、山本先輩が不満そうに口唇を尖らせる。
「いいからお前は手を動かせ。終わるまで帰さないからな」
「やっくんの横暴ー!」
これ以上ここに居たら作業の邪魔になるかもしれない。
そう思って「話が済んだので帰ります」とお辞儀をしてから生徒指導室を出た。
その後に聞こえた悲鳴は……聞かなかった事にしておこう。
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