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「それは?」
指差したのは、俺が握り締めているメモ。
「ばあちゃんからの手紙? 正月には帰って来いって」
「そうか」
「ばあちゃんにとっては自分の家が俺の家ですからね。隣の市だからそんなに離れてないですし、たまには顔見せないと」
「親は? 同居?」
宮園様の言葉に、メモを持つ指がピクリと痙攣する。
「父親は仕事で北海道行ってます。独り身だから転勤を押し付けられちゃったみたいで」
「独り身?」
あんまり、この話はしたくないんだけど。
「母親は……居ないんです。俺が小学生の時に亡くなって」
気を遣われるのが嫌で、周りには話さないようにしていた。
だから翼も知らない。
案の定、宮園様も何と答えたらいいのか解らないのか、俺の手元を凝視して固まっていた。
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