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「まぁ、いい。風紀委員にも体調不良で欠席している者が多い。人手が足りないのは事実だしな」
銀縁のメガネを指で押し上げ、薬師堂先輩が集団の中から一人の生徒を呼び寄せ何やら話を始めた。
「あ、さんちゃんだ」
「さんちゃん?」
山本先輩が「ほら、あれ」と指差す先には、薬師堂先輩と話す一人の生徒。
「三世寺藤真っていって、風紀の副委員長してるんだよ。同じ二年だけどやっくんが指名してね」
「そうなんですか」
「なかなか面白い子だよー」
『さんちゃん』と呼ばれた三世寺先輩は、薬師堂先輩よりほんの僅かだけ背が高く、襟足を伸ばした黒髪を後ろで一つに結わえている。
何か尻尾みたいだ。
「さんちゃんね、将来武士になりたいんだって」
「は? 武士?」
「何だっけ、小さい時に江戸時代村のショーを見て、だったかな? それで大きくなったら武士になりたいって思ったんだってさ」
じゃあ、さっきの妙な返事はその人ですか!
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