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「オレも手伝うよー」
山本先輩が袖を捲り、流し台で手を洗い始める。
「山本先輩、料理出来るんですか?」
「少しは包丁使えるよ? たまにカレーとか作ったりするし」
寮の部屋のキッチンは狭いけど、手伝ってもらえるのは有り難い。
「薬師堂先輩は自炊してないって聞きましたけど、山本先輩はしてるんですね」
「ホントたまにだけどね。やっくんには包丁持たせない方がいいよ? 料理どころか、包丁は武器だと思ってるから」
小声で話していたのにしっかり薬師堂先輩の耳にも届いてしまって。
「なら、お前を刺してやろうか。それと『やっくん』とか言うな」
山本先輩が薬師堂先輩に脛を蹴られていた。
自業自得ですよ、山本先輩。
「石渡君、俺も何か手伝う事はあるか?」
気を遣って薬師堂先輩が尋ねてくれるが、包丁を武器だと思っている人に手伝ってもらうような事は無い。
というか、ただでさえ狭いキッチンは山本先輩と二人並んでいるだけで精一杯だ。
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