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「いつもお前に任せっぱなしだったからな。たまには俺にもやらせろ」
ベッド脇にしゃがみ込み、宮園様が俺の前髪を掻き分けて額を撫でる。
その手が俺の目を覆い隠して。
「今日くらいはゆっくりしとけ」
優しい声と布団の温もりで、そのまま意識が遠退いていった。
熱を出して寝込むなんて、久しぶりだな。
寮に入ってからは初めてかも。
小さい時は季節の変わり目にはよく風邪をひいて熱を出していた。
それでばあちゃんに心配かけてたっけ。
それより小さい時は、母さんが。
『大丈夫、すぐ元気になるから』って、桃の缶詰を食べさせてくれた。
何だろう、熱があると気持ちまで弱るのかな。
昔の事ばっかり思い出してしまう。
宮園様にも……迷惑かけちゃったな。
徐々に意識が浮上して。
目を開けると窓際に洗濯物がちゃんと干してあるのが見えた。
ホントに洗濯してくれたんだ。
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