12450人が本棚に入れています
本棚に追加
「……怪我」
「大した事ないですよ。軽く擦りむいただけですし」
擦りむいた掌を広げて見せるが、三世寺先輩は手じゃなく俺の顔を見ている。
あ、顔の痣?
「これは前にぶつけちゃって。ドジですよね、俺って」
笑って誤魔化すが三世寺先輩は無表情のまま。
「……せっかく愛らしい顔なのに」
じっと俺の顔を見つめて、指で頬の痣をなぞった。
愛らしい?
そういう言葉が似合うのは小さくて可愛い子だけだよ。
翼とか、藤代君とか。
藤代君……。
再び溜め息が出そうなのを飲み込んで目を伏せる。
やっぱり、藤代君とちゃんと話をしなきゃな。
誤解だって言って、宮園様と俺はただのルームメイトで何でもないんだって言って……。
あ、またモヤモヤしてきた。
.
最初のコメントを投稿しよう!