12450人が本棚に入れています
本棚に追加
不意に三世寺先輩がケガを庇うようにしながら俺の手を握ってきた。
「……保健室には、俺が付き添おう」
「え、大丈夫ですよ。一人で行けます」
「……俺がそうしたいんだ」
手まで繋がれてしまっては断れない。
ホントに大したケガじゃないのに。
「解りました。お願いします」
これは諦めるしかないとそう言うと、三世寺先輩が口の端を僅かに上げて微笑む。
三世寺先輩って表情が乏しいというか無表情だから、笑った顔ってあんまり見た事無いかも。
武士だからあまり人前じゃ笑わないのかな?
武士じゃないけど。
手を繋がれたまま辿り着いた保健室では、保健室の主である先生の姿は無かった。
「……またサボりか」
三世寺先輩の言葉からして、先生なのにしょっちゅうサボっているんだろう。
入学してから今まで保健室の世話になった事が無いから、保健の先生の顔も知らない。
.
最初のコメントを投稿しよう!