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「……手当ては俺がしよう」
俺を椅子に座らせると、三世寺先輩が勝手に薬品棚を漁り始める。
「そこまでしてもらわなくても……自分で出来ますから」
「……手を怪我しているのにか」
「それはその……片手で何とか」
消毒液やガーゼを手に、三世寺先輩が俺の前に跪いた。
椅子があるんだから座ればいいのに。
左の掌に消毒と薬、ガーゼを当てて包帯じゃ解けやすいからとネットをかけてもらう。
右手はそれほど酷くないから絆創膏だけ。
「……足は?」
体操着を裾から捲って足を出すと、布でガードされていたからか赤くはなっていたが少ししか擦りむいていない。
そこにも三世寺先輩に絆創膏を貼ってもらった。
「ありがとうございます」
「……いや」
捲っていた体操着の裾を下ろしていると、跪いている体勢の三世寺先輩と間近で目が合う。
「……憂い事か?」
「え?」
「……溜め息を吐いていた」
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