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「あ」
「ん? コウくん、どうしたの?」
山本先輩の背後に恐ろしい物を見てしまって、慌てて視線を逸らす。
「あの、俺そろそろ教室に戻らないと……」
「あ、オレもやっくんに見つかる前に逃げなきゃ」
「誰に見つかる前に逃げるって?」
「だからやっくんに……」
山本先輩が声のした後ろを振り向いて。
「『やっくん』とか言うな」
腕を組んだままじっと睨みつけている薬師堂先輩と目が合い、そのまま石のように固まっていた。
「や、やっくん、こんにちは」
「お前は本当に救いようの無いバカだな。事情はお前の口から直接聞かせてもらおうか」
「な、何の事かなー?」
山本先輩、今この状況でとぼけても無駄じゃないですか?
とりあえず、俺は関係無いから退散させてもらおう。
「じゃ、山本先輩に薬師堂先輩、お疲れ様でした」
爽やかな笑顔で挨拶をしてその場を後にすると、「コウくんの薄情者ー!」という声が悲鳴と共に聞こえた。
山本先輩、御愁傷様です。
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