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じわりと目に涙が滲んで、ふらつきそうになるのをキッチンのシンクに掴まって堪える。
「宮園様……」
胸が締め付けられた苦しさから縋るように宮園様の名前を呼ぶと。
「何だよ」
俺の背後から宮園様の声が返ってきた。
アレ? 宮園様?
ゆっくりと振り向くと、いつの間に帰って来たのか宮園様が俺のすぐ後ろに立っている。
「え、宮園様? 何で……」
「聞きたいのはこっちだっての。何で泣いてんだよ」
「あ……」
慌てて服の袖で涙を拭うが、宮園様に「擦るな」と腕を掴まれて止められた。
「これは、アレです。玉ねぎを切ったからです」
「玉ねぎなんてどこにあるんだよ」
「あの、もう煮ちゃいましたけど」
下手な言い訳じゃ、宮園様は誤魔化せなかったみたいで。
「ホントお前は……」と呆れたように言われてしまう。
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