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宮園様と手を繋ぎながら辿り着いたのは、一軒の和菓子屋。
看板には『藤花堂』と書かれている。
「ほら、あっただろ」
何故か宮園様が得意気だ。
店の入り口の自動ドアを抜けると、小豆色の作務衣を着て三角巾を着けた上品そうな中年女性が「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。
「どれも美味しそうですね」
商品の入ったガラスケースには、団子や大福、どら焼きに抹茶のシューロールなんて魅惑的な物まで並んでいる。
「宮園様はどれがいいですか?」
これだけ種類があると迷って当然だ。
宮園様もガラスケースの向こうを睨んだまま悩んでいるし。
「季節の練り切りとかもありますよ。キレイだから食べるの勿体無いですけどね」
練り切りなら抹茶が合いそうだが、寮の部屋には煎茶しか無い。
「ん?」
目についたどら焼きのパッケージに見覚えがある気がする。
隣に並んだ羊羹にも。
このどら焼きと羊羹食べた事ある気がするな。
あ、そういえば前に三世寺先輩に貰ったのと同じのだ。
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